子どものインフルエンザワクチンの選び方|注射・点鼻、1回・2回をどう選ぶ?
こんにちは! clinic WIZ のぼりと・ゆうえん小児科 院長の加久翔太朗です。
今回は、日本小児感染症学会 小児感染症認定医の立場から、子どものインフルエンザワクチンの選び方について解説します。
子どものインフルエンザワクチンには、注射で接種する不活化ワクチンと、鼻へ噴霧する経鼻弱毒生ワクチンがあります。
さらに日本では、注射のワクチンは13歳未満では2回接種が基本です。そのため、「注射と点鼻のどちらがよい?」「毎年接種している小学生も2回必要?」「0歳でも接種した方がよい?」と迷う保護者の方も多いと思います。
実際には、すべての子に同じ選び方が適しているわけではありません。年齢、これまでの接種歴、基礎疾患だけでなく、注射への恐怖、発達特性や感覚過敏なども含めて考える必要があります。
- 生後6か月から2歳未満は、注射のワクチンを接種します。
- 2歳以上19歳未満では、注射と点鼻のどちらも選択肢になります。
- 点鼻は注射針を使いませんが、鼻への処置を怖がる子には必ずしも向いていません。
- 日本では13歳未満は注射2回が基本ですが、諸外国では過去の接種歴によって1回とする国もあります。
- 過去数年ほぼ毎年接種している年長児で、予防接種そのものの負担が非常に大きい場合には、注射1回という選択肢もあるとclinic WIZでは考えています。
なお、2026年のインフルエンザ流行状況と、すでにインフルエンザにかかった後でもワクチンを接種する意味があるのかについては、別の記事で解説しています。
注射と点鼻(フルミスト)はどっちがいい?
まず、日本で子どもに使用できるインフルエンザワクチンを整理します。
| 比較 | 注射の不活化ワクチン | 経鼻弱毒生ワクチン |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 生後6か月から | 2歳以上19歳未満 |
| 接種方法 | 注射 | 左右の鼻へ噴霧 |
| 日本での接種回数 | 13歳未満は2回 13歳以上は原則1回 |
1シーズン1回 |
| 特徴 | 幅広い年齢・状態で選択しやすい | 注射針を使わない |
| 接種後にみられやすい症状 | 注射部位の痛み、赤み、腫れなど | 鼻水、鼻づまり、咳、のどの症状など |
経鼻弱毒生インフルエンザワクチンは、国内ではフルミスト点鼻液として使用されています。
日本小児科学会は、喘息や免疫不全など一定の条件を除けば、2歳以上19歳未満では注射の不活化ワクチンと経鼻弱毒生ワクチンを同等に推奨しています。現時点で、どちらか一方が明らかによく効くとする十分な根拠はありません。
したがって、単純に「どちらのワクチンが強いか」で決めるよりも、その子がどちらなら安全に、確実に接種できるかを考えるのが実用的です。
点鼻ワクチンは「注射より怖くない」とは限りません
点鼻ワクチンには、注射針を使わないため、注射針による痛みを避けられるというメリットがあります。
一方で、鼻に器具を近づけられることや、鼻の中へ液体を噴霧されることを強く怖がる子もいます。
特に、発達特性や感覚過敏があるお子さんでは、注射よりも「顔や鼻を触られること」の方が苦手なことがあります。接種時に顔を大きく振ったり、手で払いのけたりする場合には、点鼻ワクチンを確実に接種することも難しくなります。
clinic WIZでは、承認上の年齢だけでなく、「鼻にワクチンを入れることを本人が理解し、顔を大きく動かさずに受けられそうか」も重要だと考えています。
そのため、点鼻ワクチンは2歳から接種できますが、実際には説明を理解できる小学生以上の方が選びやすいことも多いです。
逆に、注射への恐怖が非常に強くても、鼻への噴霧なら落ち着いて受けられる子であれば、点鼻ワクチンはよい選択肢になります。
喘息などがある場合は注射を優先して考えます
喘息、免疫不全などがある場合には、経鼻弱毒生ワクチンではなく注射の不活化ワクチンを優先して考える場面があります。
また、2歳未満は経鼻ワクチンの対象ではないため、注射を選択します。
0歳の赤ちゃんでもインフルエンザワクチンは接種する?
注射のインフルエンザワクチンは、生後6か月から接種できます。
ただし、生後6~11か月ごろの乳児、とくにインフルエンザへの感染経験もワクチン接種歴もない子では、年長児と比べてワクチンに対する十分な免疫反応が得られにくいことがあります。
初めて接種する低年齢児では、1回目の接種によって免疫系にインフルエンザの抗原を覚えてもらい、2回目によって反応を高める、いわゆる「プライミング」の意味が大きくなります。
つまり、生後6か月から接種できるからといって、年長児とまったく同じような免疫効果を期待できるとは限りません。
一方で、「0歳では接種しても意味がない」ということでもありません。
インフルエンザは乳幼児でも重症化することがあり、日本小児科学会をはじめ、海外の予防接種指針でも生後6か月以上は接種対象とされています。
インフルエンザワクチンは任意接種です。年長児ほど十分な免疫反応を期待できない可能性も理解したうえで、「VPD(ワクチンで予防できる病気)として、できる予防はしてあげたい」と考えるご家庭であれば、clinic WIZでは生後6か月から接種することをおすすめします。
13歳未満は毎年2回必要? 日本と海外の考え方の違い
日本小児科学会の2026年4月版予防接種スケジュールでは、注射の不活化インフルエンザワクチンは、13歳未満では2回接種が基本です。
一方、海外を見ると、「何歳か」だけではなく、これまでにインフルエンザワクチンを受けたことがあるかを重視して接種回数を決めている国があります。
| 国・地域 | 子どもの接種回数の考え方 |
|---|---|
| 日本 | 13歳未満は2回、13歳以上は原則1回 |
| 米国 | 6か月~8歳で、これまでに4週間以上あけて計2回以上接種したことがあれば、そのシーズンは1回。9歳以上は1回 |
| カナダ | 6か月~9歳未満で初めて接種する場合は2回。過去に1回以上接種したことがあれば、その後は1回 |
| オーストラリア | 健康な子では、初めて接種する6か月~2歳未満は2回。2歳以上は原則1回。基礎疾患がある場合などは別の扱い |
この違いには、過去の感染やワクチン接種によって作られた免疫記憶が関係しています。
インフルエンザを初めて免疫系が経験する低年齢児では、複数回抗原に触れることの意味が大きくなります。一方、これまで何度も感染や予防接種を経験している年長児では、そのシーズンの1回目の接種が、すでに持っている免疫記憶を呼び戻す「ブースター」として働くことが期待されます。
日本の乳幼児を対象とした研究でも、過去のインフルエンザワクチン接種歴が、その後のワクチンに対する免疫反応に影響することが報告されています。
こうした背景から、過去数年ほぼ毎年接種している年長児では、そのシーズンの2回目接種による上乗せ効果は大きくない可能性も考えられます。
日本では現在も13歳未満は2回接種が基本です。年長児では2回目がまったく無意味である、とする十分な根拠があるわけでもありません。
日本では小児のインフルエンザ関連脳症も重要な重症合併症として認識されています。海外の接種方法は参考になりますが、海外で1回接種が標準だからという理由だけで、日本の標準的な2回接種を一律に不要と考えるのも適切ではないと考えます。
clinic WIZでの選び方の提案
ここからは、日本の標準的な接種方法、海外の予防接種スケジュール、これまでの研究に加えて、実際に子どもへ接種するときの負担も考えたclinic WIZでの実用的な目安です。
| お子さんの状況 | 選び方の目安 |
|---|---|
| 生後6~11か月 | 注射2回。年長児ほど免疫反応を期待しにくい可能性はありますが、「VPDとしてできる予防はしておきたい」という場合は接種をおすすめします。 |
| 1歳 | 注射2回を基本に考えます。 |
| 2~5歳くらい・初めて接種 | 注射2回、または点鼻ワクチン1回のどちらも選択肢です。ただし、点鼻を安全・確実に受けられるかも考えます。 |
| 2~5歳くらい・これまでも接種している | 日本では注射2回が基本です。接種の負担が非常に大きい場合には、注射1回で終えることも選択肢と考えます。 |
| 小学生以上・注射がそれほど苦手ではない | 注射を選んで問題ありません。13歳未満では日本の標準は2回です。 |
| 小学生以上・注射への恐怖が非常に強い | 鼻への噴霧を落ち着いて受けられるなら、点鼻ワクチン1回は選びやすい方法です。 |
| 発達特性・感覚過敏などがあり、鼻を触られるのが苦手 | 点鼻より注射の方が安全・確実に接種できる場合があります。 |
| 過去数年ほぼ毎年接種している年長児で、予防接種が非常に苦手 | 日本では13歳未満2回が基本ですが、まず注射1回を確実に受けるという選択肢も現実的だと考えます。 |
| 喘息など、点鼻ワクチンを選びにくい背景がある | 注射を優先して考えます。 |
※この表は国内外の接種方法、研究結果、これまでの接種歴、実際の接種負担を踏まえたclinic WIZでの実用的な考え方です。
特に、発達面の課題や医療行為への強い恐怖がある子では、「医学的には何回が標準か」だけではなく、「その子が現実に安全に受けられる方法は何か」を考えることも大切です。
過去数年ほぼ毎年接種している年長児が、毎年予防接種のたびに非常に大きな負担を感じているのであれば、「今年も何としてでも注射を2回」という考え方だけではなく、注射を1回確実に受けるという選択肢があってよいとclinic WIZでは考えています。
チメロサールフリーのワクチンを選んだ方がよい?
注射のインフルエンザワクチンには、保存剤としてチメロサールを含む製剤と、含まない製剤があります。
チメロサールは、ワクチンの容器内で細菌や真菌が増えるのを防ぐために、長く使用されてきた保存剤です。1990年代末には、乳幼児がワクチンを通じて水銀に曝露することへの懸念から、米国などで予防的にチメロサールを減らしたり、含まない製剤を用意したりする動きが広がりました。
ただし、チメロサールに含まれるのはエチル水銀で、魚介類などを通じて体内に蓄積することが問題となるメチル水銀とは性質が異なります。エチル水銀は比較的速やかに体外へ排泄されます。
その後の多くの研究でも、ワクチンに含まれる量のチメロサールによって健康への有害な影響が生じることを示す科学的根拠は認められていません。自閉症などの神経発達症との関連も支持されていません。
そのためclinic WIZでは、チメロサールフリーのワクチンを選ぶ医学的な必要性を示す根拠は乏しく、通常のインフルエンザワクチンを接種していただいてよいと考えており、チメロサールフリーのインフルエンザワクチンを特別には用意していません。
インフルエンザワクチンは任意接種です
インフルエンザワクチンは任意接種です。
日本の標準的な接種方法を知ったうえで、年齢、これまでの接種歴、基礎疾患、注射や点鼻への苦手さなども含め、保護者の方に情報を十分に吟味していただき、ご家庭で接種方法や回数を選んでいただくことが基本となります。この記事を参考に、その子にとって現実的な方法をぜひご検討いただけばと思います。
なお、ワクチンを受けるかどうか、何回接種するか、どのワクチンを選ぶかといったワクチンのご相談は、傷病の診断や治療ではないため健康保険診療の対象にはなりません。
この記事や公的な情報を確認したうえでも個別に接種方針を整理する必要がある場合には、clinic WIZではワクチン相談を自費3,300円で行うことも可能です。(海外渡航のワクチンのご相談も同様に承っています。)
まとめ|年齢だけでなく、その子が実際に受けやすい方法を考えましょう
- 注射のインフルエンザワクチンは生後6か月から、点鼻ワクチンは2歳以上19歳未満で接種できます。
- 0歳後半では年長児ほど免疫反応を期待しにくい可能性がありますが、接種する意味がないわけではありません。
- 日本では13歳未満は注射2回が基本ですが、海外では過去の接種歴に応じて1回とする国もあります。
- 点鼻ワクチンは注射針を使いませんが、鼻への処置に恐怖や感覚過敏がある子では注射の方が向いていることがあります。
- ほぼ毎年接種していて、接種への負担が非常に大きい年長児では、注射1回を確実に受けることも現実的な選択肢です。
今年のインフルエンザの流行状況や、すでにA型インフルエンザなどにかかった後でもワクチンを接種する意味があるのかについては、「2026年のインフルエンザ流行状況と、かかった後のワクチン」についての記事もあわせてご覧ください。
2026年度のclinic WIZのインフルエンザワクチン接種について
clinic WIZでは、川崎市内での早い時期からのインフルエンザ流行を踏まえ、2026年度は例年より早めにインフルエンザワクチンの接種を開始します。
- 注射の不活化インフルエンザワクチン:9月19日(土)から
- 経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(フルミスト):9月30日(水)から
「2月まで効果を残したいから、10月にはまだ接種しない」と考えて接種を遅らせる必要はありません。特に、すでに地域で流行が始まっている場合には、流行前・流行初期に予防の機会を確保することも大切です。
2月の受験に向けた接種時期については、別の記事で詳しく解説します。
接種をご希望の方は、Webからご予約いただけます。
また、WIZ fan!の方にはインフルエンザワクチンの専用料金をご用意しています。WIZ fan!の登録条件・特典・登録方法については、専用ページをご確認ください。
引用文献・参考資料
- 日本小児科学会「日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール 2026年4月1日版」
- 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会「経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方」
- 日本小児科学会「インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く)」
- Centers for Disease Control and Prevention「Seasonal Influenza Vaccine Dosage & Administration」
- Public Health Agency of Canada「Statement on seasonal influenza vaccines for 2026-2027」
- Australian Immunisation Handbook「Recommended doses of influenza vaccine and vaccine type by age group」
- Ito K, et al. Prior vaccinations improve immunogenicity of inactivated influenza vaccine in young children aged 6 months to 3 years: A cohort study. Medicine (Baltimore). 2018.
※本記事は2026年9月7日時点で公表されている情報をもとに作成しています。予防接種スケジュールや学会指針が更新された場合には、内容も適宜更新します。

記事監修
院長 加久 翔太朗
clinic WIZ のぼりと・ゆうえん小児科 院長
博士(医学)、聖マリアンナ医科大学 小児科 講師
日本専門医機構認定 小児科専門医
日本小児科学会認定 小児科指導医
日本小児感染症学会 小児感染症認定医
新生児、感染症、アレルギー、小児神経、発達・行動、子どものこころまで、複数の専門領域を横断した診療を行っています。
